denimm日誌

雑記帳

モヤモヤの正体

その日、私はカレーが作りたかった。

 

我が家から最寄りのスーパーに行き

カレーの材料や他の食材をカゴに入れ

レジに並ぶと、

そこには息子と同じ小学校に通わせる

顔見知りのママがレジを打っていた。

 

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軽い会話のやり取りの後、

私は買った食材の袋詰めを済ませ

車に荷物を載せていたところで名前を呼ばれた。

 

振り向くと、先ほどの彼女だった。

彼女は「これ!」と言って

じゃがいもを差し出した。

 

「じゃがいも、忘れていたみたいなんで。」

 

・・・あー、袋に入れ忘れちゃったのか・・・

 

「すいません、ありがとうございます♪

 こんな大きいの忘れるなんて、私ったら。」

 

そんな会話をしながら、それを受け取った。

 

ところが、自宅に着いて、レジ袋の底から

じゃがいもは出てきた。

隣には、別の袋に入れられた渡されたじゃがいもが

横たわっている。

二袋買ったっけ?

すぐに、レシートを確認すればよかった。

でも、気にもとめなかった。

 

っていうか、もうこんな時間

夜ごはんの用意しないと・・・

 

こうしてじゃがいもは

雑事の中に紛れ込んでいった。

 

それから、少しの間、そのお店に行く用事がなく

3,4日ぶりに店に行くと

この間のママが開口一番こう言った。

 

「この間、渡したじゃがいも、

 denimmさんのじゃなかったみたいね。

 今日、持ってこられてる?

 え?あー、そう、持ってきてないのね。

 じゃあ、198円お願いできるかなー」

 

どうやら、じゃがいもは私のものではなく

他の誰かが忘れていたものだったようだ。

 

「あー、うん、じゃー、はい、これ。」

 

私は一瞬、返事が遅れたものの

言われるがまま、小銭を差し出し

店を後にしたのだった。

 

だが、家に帰っても

あの時、感じた違和感を私は拭えずにいた。

私は束の間

じゃがいも横領に手をそめさせられ

謝罪ひとつなく

レジかごに入れてもないもうひとつの

じゃがいも代金を請求された。

 

仕事から帰ってきた主人をつかまえ

 

「おかしいと思わない?

 あのね、向こうが勝手に渡してきてさー

 こっちには必要がないものをだよ、

 3日後お店に行ったら、持ってきたか聞いてきてね、

 お金も出せだってー」

 

ぐずぐずと訴える私に、主人は

 

「で、あなたはどうしたの?」

 

「そりゃー、もちろんお金を渡したよ。

 数百円の話なんだから。」

 

伏し目がちにしていた顔を上げて彼は言った。

 

「じゃー、しょうがないね。

 あなたはいいひとの自分を選んだんだから。

 数百円のことでもめる人って思われるのが

 嫌だったんでしょ。

 今、モヤモヤするぐらいなら

 もめるのを覚悟で

 その場で言う以外ないんだから。」

 

図星だった。

図星過ぎて、気持ちの納めどころが見つからなかった。

 

「あっあ、あなたはすぐそうやって、

 正論をふりかざすのよね。

 そんなん、今いらないの。

 今は、そういう事ってあるよね~が正解でしたっ!」

 

内弁慶な嫁は主人にはこう言ったけれど、

本当にそうなのだ。

 

些細な日常には、常に予期せぬ選択肢がふりかかる。

いいとこどりは出来なくて、

後になって、晴れない気持ちを引きずるくらいなら

喧嘩上等の覚悟さえ持って、

気持ちに備えを用意しておかなければならない。

 

そして、本当は気づいている。

 

このもやもやの正体は

理不尽に思える相手の言動にあるんじゃない。

NOと言えなかった、

言い返せなかった口惜しさが

私を苦しくさせるのだ。

 

この感じ、前にもあった気がする。

 

でも、健やかに生きるための本能なの?

嫌な記憶って奥に追いやるようにできてるのか

普段は忘れてることが多い。

だから、次への対策にならず

同じ失敗を繰り返す無限ループにはまる。

我ながらアホだなーと思う。

 

見るたび忌々しい記憶を蘇らせる

じゃがいもに罪はないので、

さっさとお腹に消えてもらうべく

大量のポテトサラダを作った。

 

出来たポテトサラダはとても美味しかった。